こんな男に誰がした!
次の日、買い物をして、お土産を日本に宅配便で送った。
せっかくフランスに来たから、モンサンミッシェルへ行きたいと言うことになり、明日1日かけて、行くことにした。
向こうのホテルは、予約できなかったので、またパリに戻り、もう一泊同じホテルに延泊することにした。
翌日は、朝早くから出掛けた。
急だからツアーは満席で、申し込めず、自力で行くしかない。
パリから、TGVと言うメタリックの綺麗な新幹線みたいな列車に乗る。
約2時間でレンヌ駅に到着。
そこから、レンタカーを借りて、モンサンミッシェルへ向かう。回りは田園風景が広がり、とてものどかで、パリとは全然違った。
モンサンミッシェルに着き、修道院に向かった。
「輝 (ひかる)!」
振り返ると、そこにはさやかさんが白いミニドレスを着て立っていた。
フランスまで来て、まさか会うとは思わなかった。
「さやかさん、撮影ですか?」
わざと、他人行儀に、敬語で話した。
「そうよ。今、映画の撮影で来ているの。そちらは?」
「ああ、彼女は、フィアンセです。仕事半分、プライベート半分の旅行です。」
「そうなんだ。忙しそうだね。」
「そちらも。じゃ、失礼します。」
俺は、弥生の手を取ると、その場を後にした。
弥生は、
「どなたなの?あの人、見たことあるわ。」
「モデル時代に、一緒に仕事をしたことがある。」
俺は、弥生の目を見ずに、つっけんどんに言った。
弥生は、目をゆっくりと動かして、何か考えている。
「思い出した。口紅のポスター、確かあの人だった。」
「いいよ、思い出さなくて。早く見に行こう。」
この後、日本に帰国してから、またひと波乱あるとは、想像すらしなかった。