こんな男に誰がした!
二人は、酒井つばさ、村越真由といった。どうやら有賀由実と同じ大学らしい。学部が違い、交流はなかったようだが。
「ねえ、聞いた?なんでも我社の御曹司が、入社したらしいけど。」
酒井つばさが、俺たちに聞いてきた。
おれは、心臓がバクバク言うのを感じながらも、平気な表情を崩さなかった。
「俺も聞いたけど、まさか俺たちと一緒に研修は、受けないだろ。」
「だよな。初めから経営サイドだろ。」
「じゃあ、入社したのは、確かなんだ。その内、拝めるかな?」
「雲の上の話は、おしまい。来週から、いよいよ宿泊研修ですな。」
と、木本は、これで三度めの話題転換をしたのだった。
俺は、確信した。やはりコイツは、俺の正体を知っていて、わざと話を逸らしている。
木本は、一体どういう人物なんだろうか?