聖夜の光



北欧風の木目調で可愛らしい内装のカフェが待ち合わせ場所だった。

からん、とドアベルを鳴らして店に入り、席を見回して、以前姉から見せられていた写真の面影の彼を目で探す。

片隅の窓際の席に、彼は居た。

茶色掛かった短めの髪はワックスで軽く散らされ、涼しげな目許と通った鼻筋と、形の良い弧を描く唇が作り出す端正な容貌は、すっきりしたスーツ姿だと余計に目を惹く。

陽奈子と同じ会社の、若干29歳にして営業課長を務める人だと聞いている。
いかにも仕事がデキる、という印象は納得だ。

私の姿を見付けると、彼は穏やかな眸で、少しはにかむように目許を甘く和らげて、親しげに笑い掛けてくれた。


姉の彼氏と解っていながら、思わず胸の奥で心臓が跳ねる。


写真で見た時にカッコいいなあ、とぼんやり思っていたけれど、こんなに素敵な人だと思わなかった。

向かいの席に座った私はすっかり上の空になってしまって、いつもはスイーツのメニューを決める時は集中して吟味するのに、その時はオススメ、なんて書いてあったパフェを何となく注文するのが精一杯だった。

彼は渋くコーヒーでも頼むのだろうと思っていたら、私とは違うパフェを注文していて、いかにも大人の男性と云える見た目とのそのギャップがまた好ましかったのを覚えている。

二人の前にそれぞれパフェが出そろうと、彼は唐突に言い出した。



「なぁ、それ、美味そうだな。一口くれよ」

「え?」

「一口」

「あ、でも、……いえ、あの、……うん」

「やった。じゃあ頂き」



私は陽奈子じゃないのに、と少し困って眉を下げたが、何だか恋人同士らしいそんなやり取りが嬉しくなって。


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