聖夜の光
部屋のチャイムが鳴って、私ははっとして顔を上げた。
どうやらやっと姉が来たらしい。
章吾さんへの想いは別にして、彼女は私の大好きな姉なのだ。
横恋慕の気持ちを封じ込めることぐらい、何でもない。
今夜は姉と二人、この素敵なスイートで楽しく過ごそう。
私は急いで行って、扉を開ける。
「メリークリスマ、……、」
明るく言い掛けた私の言葉が止まったのは。
ドアの向こうに彼が立っていたからだった。
章吾さんが来るなんて聞いてない。
仕事で来られないはずなのに。
固まった私は二の句が継げず、ぽかんと口を開けて長身の彼を見上げた。
彼はと言えば、何だか気恥ずかしそうに眉を下げて。
「メリークリスマス。入るよ」
こんな時でもその甘さに胸が痛くなるような笑みを滲ませてくれるのが心憎い。
私は我に返って頷き、彼を部屋へと通した。
だが直ぐに気付く。
もしかしたら彼は、私の事を陽奈子だと思っているんじゃないだろうか。
だったら本当の事を言わないと。
私は貴方の彼女の陽奈子ではなく、妹の小夜子だと。
そう思うのに、言葉が出てこない。
口籠って考えている間に、彼の両腕がふわりと私を包み、私はその広い胸の中に抱き取られた事に気付いた。
彼のシトラス系の香水の匂いが鼻腔に忍び寄り、私の自制心を揺らす。