聖夜の光
見上げた彼は、あのカフェで見たような、どこか悪戯気な顔で笑んでいた。
「聞いてないよな。俺達も双子なんだよ。章吾は俺の兄貴。
更に言うと、あのカフェで君と会ったのも俺だ」
何と、私たち姉妹が双子であるのと同様に、章吾さんにも双子の弟が居たという事らしい。
そしてあの時、私の姉と彼の兄が共謀して、あの入れ替わる悪戯を仕掛けたのだそうだ。
理由は単純。「お互い双子で、弟と妹も付き合ったら面白いよね」だそうな。
つまり目の前の彼も、章吾さんのフリをして私に会ったという事。
そしてあの時私が恋をしたのは、目の前のこの人なのだ。
「嘘。それって……」
「お互いに兄貴と姉貴にハメられたんだよ、俺達」
「……」
「で、俺は、まんまと君にハマってしまった。
何かすげぇ悔しいけど」
イヴの今夜、兄から全てを聞いたのだそうだ。
そして私の姉が私を呼び出し、兄の章吾さんが彼をここに来させた。
彼は困ったような眼差しで私を見下ろし、整った指で優しく私の頬を撫ぜてくれる。
それから、息を吸い込んで、私を真っ直ぐ見詰めて。
「つまり俺はあの時、君に惚れました。
プリン、あんなに美味そうに食って、可愛く笑いやがって。
……俺、あの瞬間に全部持って行かれた」
「……」
「兄貴の彼女なのにって、すげぇ悩んだ」
「……」
「……小夜子? 君は、小夜子だろ?」
「……」
「何か言えよ」
気遣わしげに眉根を寄せ、私を見下ろす彼に。
私が恋をした彼が言う、夢みたいな告白に。
私は何を言えば良いのだろう。