もう一度出会えたら
『菜々さん…後悔してるんですか?』


彼にこんな事を言わせちゃいけないのに…困らせたくないのに。


首を横に振って答えた。


『じゃあ、なんで顔を見せてくれないんですか?』


「ご…めんね。ただ恥ずかしいだけだから。
本当に後悔なんてしていないよ」


後悔はしていない。だけど本当の気持ちなんて言えるわけない。


自分でもよく分からない、この気持ちをうまく伝える術もないのに。


『…分かりました。今はそういう事にしておきます。
でも、僕の気持ちは……』


そう言ったまましばらく考え込むかのように数秒間の間が空いた。


僕の気持ちって……なに?そう思うのに彼の口から出てきた言葉は


『やっぱり今はやめておきます。』


そんな言葉だった。


背中を向けているから、今彼がどんな表情をしているのかが見えなくて


その発言の真意を読み取ることもできない…。


聞きたい気持ち以上に聞きたくない気持ちの方が大きい。
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