もう一度出会えたら
その後、あのまま再び眠ってしまったらしい私が目覚めると


『おはようござます』


頭上から聞こえた柔らかな声に…顔を上げるとこっちを見ている彼とぱちっと目が合い急激に恥ずかしくなった。


さっきまでは、私が彼の寝顔を眺めてたのにいつから起きてたんだろう?


まともに顔を見られず、目を伏せながら


「…お…はよう」


と挨拶をした。昨夜は声を出しすぎたせいか、声が掠れている。


『菜々さん、体大丈夫ですか?昨日は無理をさせ過ぎてしまったので……』


涼くんはそう言いながら私の前髪を耳にかけ顔を上から覗き込む。


うわぁ恥ずかしいからそんなに見ないで。確かにかなり無理はさせられたけど。


「う…ん。朝、一度起きたんだけど、また寝ちゃったみたい…ごめんね」


『菜々さんは、気にしないでまだゆっくりしてて下さい。
僕はもう行かないといけないので…帰る前にシャワーだけお借りしても良いですか?』


そう言って私の頭を撫でた後、あっさりベッドから先に抜け出してしまった。


やっぱりあれは夢だったのかもしれない…。


世の中、自分の都合のいいようにばかり物事がいくわけなんてないのだから。
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