もう一度出会えたら
私もスーパーへ買い物に行くため彼と駅まで一緒に行く事にしたけど、昨日と同じこの道も昨夜と今とでは何もかもが違っていた。


隣を歩く彼との距離も一夜を共に過ごしたにしてはよそよそしい距離で心が冷たく寂しい気分になった。


今日も日差しが強くて、とても暑い日だけど、2人の間を流れている温度は急激に下がってしまったようだった。


ふと思った…


あの人と彼とでは、どちらが私を苦しめる存在になるんだろう…と。


駅が近づくにつれて、段々足取りが重たくなっていく私。


隣を歩いていたはずの彼とはいつの間にか距離が開いていた…。


それに気づいた彼が足を止め、不思議そうに私を振り返る……。


まだ今なら後戻りが出来る….深入りしてこれ以上傷つく前に引き返す?


やっぱり私は臆病になってしまったようだ。


『菜々さん?』


「あっ……ごめんね。」


そう言って小走りで彼のすぐ後ろまで駆け寄ると、彼は安心したように微笑んでまた歩き出した。
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