もう一度出会えたら
今夜は久しぶりに沙羅と2人で女子会の予定。


目の前に積まれた伝票の束をパソコンに打ち込みながら黙々と仕事を片付ける。


昨日もかなり仕事を前倒しで頑張ったしこれなら定時には帰れそう…と思った時


『朝比奈、これもお願いっ』


そう言ってデスクに領収書の束を置いたのは同期の山口大翔(ヒロト)だ。


顔を上げると、申し訳なさそうに“ごめん”って顔の前で手を合わせている……。


うん、これ昨日までに出してって言ってたもんね。


しかも最近の私は心に余裕がない上に今日は沙羅との約束もある。


「大翔……これ昨日で終わったよ。はい返品」


『本当、ごめんなさい!でもほら、俺昨日は出張だったから帰社した時には朝比奈既に帰ったあとだったし。お詫びに今度飯おごるからそれで許して』


もう一度顔の前で手をすり合わせている…私は仏様じゃないって。


「確かに昨日は出張だっだけど、その前に出せば済むことだし、そうじゃなくてもせめてもっと早い時間に出してよ。今夜は約束があるから早く帰りたかったのに大翔のせいで遅刻しそうじゃん。」


つい八つ当たりでそんな事を言ってしまった…。


『本当にごめん忘れてた俺が悪かったです。…その約束って男とデート?』


怒られてしゅんとなった大翔の声が最後の方は遠慮がちにそう聞いてきた。
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