もう一度出会えたら
返事も忘れて慌てて窓から外を見る…


私の部屋の窓からは外の様子が見えるけど彼の姿はここからでは確認ができ


ない。急いで階段をかけ降り家の外に勢いよく飛び出すと少し離れた所から


近所のおばちゃんのやたらと元気な声が聞こえて来た。


『朝比奈さんとこやったら、一番奥の家やで。そやけど、にいちゃん、えっらい男前やなぁ。おばちゃんもあと20歳若かったら惚れてたかもしれへんわ』


大阪のおばちゃんに家を教えてもらっているのはか紛れもなく彼で実際に目の


当たりにした今も、彼がここにいるこの景色が不思議だった。


彼はおばちゃん特有のボディタッチの攻撃をうまくかわしながら、極上のスマ


イルでお礼を言ってこっちに向かうため、視線を向けた…。


彼が私を見つけると、さっきのおばちゃんに対する極上のスマイルなんて比じゃ


ないほどの笑顔を向けてくれた。


彼の視線に捕えられた瞬間、周りなんて目に入らなくなって堪らず駆け寄り彼に


抱きついた。彼は一瞬驚いたかのように固まったけど、すぐに私を抱く腕に力が


入り私の存在を確かめるように何度も何度も私の名前を呼んだ。


“ゴホンッ”
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