もう一度出会えたら
『ストーカー…に近いものだったかもしれません。だから、あの駅で菜々さんに偶然見られた時、菜々さんに矛先が向かうのが怖くて彼女に菜々さんの事を気付かれるのが怖かったんです。だけど、結果的には気付かれてしまって。あのまま、彼女を振り切って菜々さんをおいかけることができなかった』


「…やっぱり、そうだったんだ」


『やっぱり?』


「うん…あの時は動揺してしまったけど、今はあなたの事信じてるから話を聞いてて素直にそう感じたの」


『菜々さん、ありがとう。だけどあの後、彼女ともう一度冷静に話をして…彼女もやっと僕の気持ちを理解してくれました。だから、もう何も心配しなくても大丈夫です』


そして彼はホッとしたように笑顔を見せた。


「ねぇ…一つだけ聞いてもいい?」


『彼女とは過去も含めて、何もないですよ。安心して下さい』


私まだ何も言ってないのに…


「え…なんで?」


『言ったでしょ。菜々さんの事は分かるんですよ。聞きたかったのは…これですよね?』


悔しいけどその通りで結局彼には何もかも見透かされているみたいで敵わない。


「うん…あと、今日はこの後どうするつもりだったの?」


そう聞いたところで、テーブルに置いた私のスマホが着信の音を鳴らした。


画面を見ると、着信は母からだった。
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