もう一度出会えたら
出るまで切らへんで!と言う母の声が聞こえてきそうな程、しつこく鳴ったまま


のスマホを手に取り彼を見ると、出て下さいと言ってくれた彼にごめんねと言っ


てから電話に出た私の耳に母の大きな声が響いてきた。


『菜々!あんた今どこにいてんの?何も言わんと家出てったままで……そしたら今な、回覧板持ってきてくれた後藤さんが菜々が男と抱きおうてた言うからびっくりして電話してんけど…』


母がまだ何かを言っているけど聞こえなかった。やっぱりあのおばちゃん言った


んだ…。まぁ最初から期待なんてしてなかったけどさ…思ってたより早かったと


いうかなんというか。


『菜々…聞いてんの?その男前の彼氏東京から来てくれたんやろ、ホテルにでも泊まらせるつもりなん?』


「え…うん、多分」


『はぁ!?多分って…あんたホテルなんていらん金使わさへんでも、うちに連れて来たらええねん。分かった?待ってんで』


言いたいことだけ言ってガチャリと電話を切った母に思わずため息を吐いた。


心配そうに“ どうかした? ”と聞いてきた彼に、曖昧な笑顔を向けて


「…うん、やっぱりさっきのおばちゃんが母に言ったみたいで、それで……ホテルなんかに泊まらんと家に連れて来いって一方的に言って電話切られちゃって。どうしよう…ごめん」


彼にとってもいきなり実家なんて申し訳なさすぎて下げた頭を上げれずにいると


『え…いいんですか?』


予想に反する彼の明るい声に下げていた顔を上げ彼の顔を見た。
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