ブルーカクテルで乾杯を
夜景を一望できるレストランで、ワイングラスを小さく鳴らす。
ピンとしたテーブルクロスの上に運ばれてくる料理すべてに感動し、今日契約を取れたという話をまともにできたのはデザートを食べながら。

イブなのに色気のない話をする私を咎めることもせず、彼は「よかったじゃん」と祝福してくれた。
その後、「実は」と言ってルームキーを見せられた。驚いた顔をした私に、「柄じゃないけど」とひと言添えて。

その後向かった先は、十五階のツインルーム。

「予約がいっぱいだったから、いい部屋は空いてなくて」
「充分だよ!夜景も綺麗に見えるし、ほら」

私はベージュのカーペットの上を歩き進め、シックなブラウン色のカーテンに手を添え、外を覗いた。

ベージュとブラウンを基調としたシンプルな部屋。
間接照明だけが点いていて、少し薄暗く感じたけれど、逆に夜景が際立って見える。それはまるで窓がキャンバスになった絵画のように。

そんな乙女チックな思考になってしまうくらい舞い上がっていた。
ずっと一緒にいて気心も知れてるはずなのに、こんなに緊張するなんて。

私はなかなか外を見たまま振り返ることができずに胸を高鳴らせていると、不意に後ろから抱き留められた。

「……なんか、すげぇ緊張するな」
「あはは。慣れないことしてるからね」

後ろから回された腕に手を添えて笑い飛ばすしたわけは、この落ち着かない心音に気づかれそうだって思ったから。
けれど、一瞬、どちらも黙ってしまって……。

「あ、あの……ん――」

綺麗な景色を背回されて、甘く溶かされるようなキス。
彼とベッドになだれ込んだ拍子に、手にしていたカバンを落とし、彼へのプレゼントが椅子の下に転がった。

私はプレゼントの行方も気にせず、アイボリーの壁面に浮かぶぼんやりとした光を目に映す。
重なる重みと共に、柔らかな光も見えなくなり、そのまま何も考えられなくなった。

仕事も、夜景も……これからのことも――。
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