今はまだ、あいまいなままで。
「では、来週までの一週間!皆さんに宿題です!」

講師が張りのある声で宣言すると、子供のように『えー』と合いの手の抗議が飛んだ。


「一週間以内に3つ、いつもと逆の行動をしてみてください。自分、仕事、パートナー、の3つがテーマです」

「パートナーがいない人は?」

中井くんが質問する。

「苦手な人や大切な人。何か関係に変化を起こしたい相手を選んでください」

「逆ってどういうことですか?」

私も聞いてみる。

「それを聞いたのはなぜでしょう?」

「意味がはっきりしないと難しいなと思って」

「なるほど。はっきりさせたいんですね。では、あえてはっきりさせないのがあなたの『逆』かもしれませんね」

「はあ」

はぐらかされた?



「小さなことでも構いません。ただ『それはないな』とつい否定してしまう行動を。ついやりすぎちゃう人は堪えてみる。カッコつけたい人は恥ずかしいことをする。それが『逆』です。
正解はありません。
何をして、何を感じたか。分析せず、一週間、ただ感じてみてください」

結局は詳しく説明してくれたけど。

はっきりさせない、か。確かに「ないな」って思う。

白黒はっきりさせたいタイプかも。ゴールの見えない遠距離恋愛はきつかったな、なんて嫌でも思い出す。

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