今はまだ、あいまいなままで。

金曜の朝。またあのホテルのラウンジに向かう。

ゆったりした革張りのソファから、にこやかに手を振る中井くん。

「ここ気持ちよかったって言ってたから、早く来たら会えるかと思って」

「それなら先に言ってくれたらいいのに。驚くでしょ」

「ほんとに空が広いな」

見上げる彼を眺めて、わかった。私たち、やり直せるのかも。私さえ、望めば。



「終わったら上でご飯食べよう。ご馳走するよ」

らしくないマメさを発揮して、そっけない言葉だけど少し緊張をにじませて。彼は先に研修会場に入って行った。



ドキドキしないわけがない。元々私が一方的に追いかけて始まった恋だった。

でも、彼はまた流れに乗っかってるだけだ。偶然再会した元彼女。ちょうどいいから誘ってみてる。

また同じことの繰り返しになるんじゃない?

それでもいいと思っちゃうとか、全部許したくなるとか、バカだ。でもやっぱり好きだと気づいてしまう。
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