今はまだ、あいまいなままで。
「宿題について発表してくださる方?」
講師に聞かれても、そこは控えめな日本人。なかなか手が上がらない。
「では先週質問してくださった中井さん、いかがですか? 」
「はい。自分と仕事についてはいろいろ試してみて、意外と軽く力抜いても誰も気にしないと気づきました。返って評判いいくらいで」
周りから気持ちのいい笑い声が起きた。
昔より、確かに力の抜けた自信が見える。仕事頑張ってきたんだろうね、向こうでも。
「面白い気づきですね。パートナーについては思い当たる方いましたか?」
「パートナーになってほしい人への行動は、まだこれからですけど」
はにかんだ笑顔で、でもはっきりとした答えに、すーっと心が冷えた。
そうなんだ。まだ行動してないんだ。
なんだ、私じゃないじゃん。マメにやってみたの、ただのお試し相手か。
じゃあなんで食事になんか誘うの? まさか相談?『元カノに恋の相談をする』があえて逆とか?
バカにしないでくれる?
うっかり滲みそうな涙を、怒りでかき消す。
今日の研修も知らないアイデアに満ちていて十分に参考になるものだったけれど、一度冷えた心はそのままだった。
何度か中井くんの視線を感じたけれど、目を向けなかった。