今はまだ、あいまいなままで。
終了後も忘れた振りして帰ろうかと思ったのに、あっという間に捕まってレストランへ連れて行かれてしまった。

「中井様ですね。お待ちしておりました」

と案内された先は空が広い窓際の席で、何を考えているのかこの人は、と思う。まさか、下見?




「朝あんな話しちゃったからだいたいバレてると思うけど」

彼が口火を切るから、先回りして冷やかすことにする。元カノのアドバイスが欲しいって?

「これから行動起こすんだよね? いつも女の子の押しに流されちゃうから逆を行くってこと?」

「まあ、そういうことかな。後悔してるんだ」

「そう。今度はうまく行くといいね」

「他人事だな」

苦笑する姿もかっこよくてムカつく。

「たまたま再会した元カノとよりを戻そうって話かと思ったの。そんなつまんない話じゃなくてよかった」

期待させといてって腹が立つけど、つまんないって言っとく。

一瞬目を丸くされた。勝った。

「……長谷に聞いた?」

「どうかな」

なんなの、長谷ちゃんは相手を知ってるわけ。

「冷たいよなぁ」

「当然だと思うけど」

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