君は私の人生の、輝く太陽。
その手に、安心した。
私を"遥香"として見てくれる人は、いるんだ。
私はひとりじゃない。
でも、でも。
「・・・っくるし、かった!誰も、私に、っ気づいて、くれな、くてっ!」
「・・・うん」
私の口からこぼれる、本当の言葉。
それを、しっかりと聞いてくれる直斗。
「っ気づいてくれて、ありがとう・・・!」
「当たり前だろ」
直斗はそう言って、微笑んだ。
「・・・っそろそろ帰んなきゃ」
茜色に染まった空。
私たちの町を、茜色に染めていく。
「・・・そうだな」
家に着くまで、私たちは一言も話さなかった。
「・・・直斗」
家の前で分かれる直前。
私が直斗の名前を呼んだ。
直斗は私の目を見てくれる。
「・・・あのさ。私が、遥香だって言わないで。」
「っなんで・・・」
直斗は私の言葉に目を見開いた。
そして、悲しそうな顔をして、私に問いかける。
「なんで言わないんだよ。だってお前は涼香じゃな────」
「直斗。」
直斗の言葉を遮った。
「・・・もう、遅いんだよ。」
「お前・・・」
「だって、遥香のお葬式をあげたんでしょう?みんなの中で遥香は死んだことになってるの。」
「でもお前は・・・!!」
「いいの。もう遅いんだよ。遥香が死んで、涼香が生きている。・・・もしそれが嘘だとしても、真実に塗り替えてしまえばいい。」
私は自分の足元を見た。
涙がこぼれそうになる。
でも、泣いちゃいけない。
「お前は、それでいいのかよ。」
「・・・っじゃあどうしろっていうのよ!?目の前で、"遥香が死んだ"って親が泣いているのに。本当のことなんて言えないよ・・・。」
最後の方は、消え入るような声で。
それでも直斗は、私の言葉を拾ってくれた。
「・・・わかった。」
私は、バッと顔をあげた。
「・・・でも、もし。もし、本当に辛くなったら、俺に全部言え。俺だけが、お前が遥香だってわかるんだから。・・・約束な。」
「・・・っわかった!!約束する!っありがとう!」
「おう。・・・じゃあな」
「うん!ばいばい!」
私たちはそれぞれの家へと入って行った。
~マリーゴールド「絶望」~