君は私の人生の、輝く太陽。
「ねぇ、涼香。クロッカスの花言葉って知ってる?」
突然そんなことを言い出したお母さん。
私は花に詳しくない。
だから、当然花言葉なんて知らなくて。
「知らない・・・」
"そうよね"とお母さんは優しく微笑んだ。
「・・・クロッカスの花言葉はね────」
花言葉を知っている花なんて、私にはない。
お母さんだって、私が花に詳しくないことを知っていたはずなんだ。
それなのに、どうして私に聞いてきた?
分からない。
「────やっぱり私からは言わないことにしようかな。」
教えてくれないの?
お母さんの意図が分からない。
なにを思って、さっき私に花言葉を聞いたんだろう。
今まで花言葉の話なんてしたことなかったのに。
なんで突然・・・?
「・・・え、教えてくれないの?」
「うーん・・・。もし、涼香が知る時が来たら、その時お母さんから言うわ。」
それって、お母さんが花言葉を言う意味ないんじゃない・・・?
だって私が花言葉を知ってからでしょ?
お母さんはなにを考えているんだろう。
人が考えていることなんて、どんなに頑張っても分からないけれど。
それでも知りたいと思ってしまう。
もし、私がお母さんの心の中を覗けたら。
もし、お母さんが私の心の中を覗けたら。
そんなことはどんなに願ってもできないことだけれど。
それでも、今私たちは幸せに暮らせたのかな。
"私"に気づいてもらえて、"涼香"がちゃんと死んだことになって。
私は"私"のまま、今も生活できたのかな。
「・・・分かった。じゃあ、私がクロッカスの花言葉を知ったら、お母さんからもちゃんと花言葉を教えてね!」
「うん。約束ね。」
お母さんはふふっと微笑んだ。
でもその微笑みが、とても悲しそうで。
なんでそんな悲しそうなのか聞きたいのに、言葉がでてこない。
「涼香、中に戻りましょう」
そう言ったお母さんの顔には、もう悲しみはなかった。