君は私の人生の、輝く太陽。
4章
白色のツツジ
***
また自分の家に住むようになってから3日が経った。
何事もなく、過ごしている。
まぁ、私が涼香になっている時点で何事もないわけではないけれど。
バレることもなく、喧嘩をすることもなく。
そして今日もまた、いつものように家を出る。
「行ってきまーす!」
今日の天気は快晴。
カラッと晴れているけれど、やっぱり寒い。
私はマフラーで少し顔を隠した。
「おっせーぞ!」
私の家の門の外で声をあげたのは、直斗だ。
私がこの家に住むようになってから、前と同じように、学校には一緒に登校している。
「ごっめーん!」
「お前なぁ・・・。行くぞー」
そう言って歩き出した直斗を、急いで追いかける。
学校が近づくにつれ、同じ制服を着た人が増えてきて。
私の足はどんどん重くなっていく。
「遥香、どした?大丈夫か?」
周りに聞こえないように小さな声で尋ねてきた直斗に、笑顔を見せる。
「大丈夫ー!」
こんな事で心配かけちゃいけない。
いつでも笑っていなきゃ。
「じゃーね!・・・帰りは昇降口で待ってるよ!」
「おう!」
直斗の教室の前で別れた。
一人になった途端、寂しくなって。
今別れたばかりなのに、振り返った。
もしかしたら、そこに直斗がいるんじゃないかって。
でもそこにはいなくて。
当然のこと。
でも、直斗が居なかったということで、胸がチクチクと痛み出す。
なんで痛いのかなんて分からない。
でも、痛くて。
涼香がいた頃は、ひとりじゃないって思ってた。
独りぼっちになっている人が可愛そうだと、同情していた。
けれど、本当に独りぼっちなのは私だった。
莉心ちゃんが、涼香のことをどう思ってるのかなんて分からないけれど、少なくとも"私"に友達と呼べる人なんていない。
直斗は、"友達"より先に"幼なじみ"になってしまうから。
涼香がいて、直斗がいて。
二人のおかげで私は今まで独りぼっちにならなかっただけなのかもしれない。
止まっていた足を動かす。
教室について、真っ先に私の席へと向かう。
もうほとんどの生徒は来ていた。
準備を終えて、すぐに机に突っ伏した。
そして、あることに気がついた。
────今日、莉心ちゃんが私のところに来てない・・・。
なんで?どうして?
いつもなら私が準備をしている時に来るのに。
そういえば、私が元の家に住み始めてから、少し素っ気ない気がする。
私なにかした?
色々考えてみるけれど、やっぱり分からなくて。
私の勘違いかもしれない。
考えすぎ?自意識過剰?
それでも考えてしまうのは、"私"が独りぼっちだから。
心のどこかで"私"が私であることに安心していた。
私でいる限り、莉心ちゃんがいるから独りにはならないと思っていたから。
・・・"私"は独りぼっちだから。
でも、本当は両方とも独りぼっちだったのかもしれない。
先生が入ってきて、教室が静まる。
それと同時に、私も顔を上げた。
今日もいつもと変わらない。
隣のクラスで1人死んだところで、四ヶ月も経てば、みんな忘れてしまう。
世界は止まらない。
時間も止まらない。
それなら進んでいくしかない。
そう思って進んでいるつもりだけれど、たぶん進んでいない。
進んでいないから、"私"を忘れることが悲しく思うんだ。
早く、進め。
早く、早く。
時間の進み方は変わらない。
授業なんて聞いていられなかった。
気付けばお昼になっていて。
私の机には莉心ちゃんが来た。
それに、ひどく安心したんだ。