君は私の人生の、輝く太陽。
今の時刻は夜の7時。
流石にインターホンを押さないとまずいかな。
私は、溢れる涙をそのままに、インターホンを押した。
「・・・涼香ちゃん?」
インターホンからは、直斗のお母さんの声が聞こえて。
少しして、玄関のドアが開いた。
「どうしたの?」
「えっと・・・」
なんて言おう?
喧嘩なのかな。
喧嘩の原因を聞かれたら答えられない。
「・・・入っていいよ。」
おばさんは、優しく笑った。
その微笑みは、直斗とそっくりだった。
「直斗ー!」
階段の下から、二階に向かっておばさんが叫んだ。
すぐに直斗が階段を下りてくる。
直斗は泣いている私を見て、目を見開いた。
「・・・はっ!?え、どした?」
「・・・直斗っ!」
私は直斗の質問に答える前に、直人に抱きついた。
ぎゅっと服をつかむ。
もう私には、直斗しかいない。
「・・・とりあえず部屋行くか。母さん、上いってるから。」
直斗はそれだけ言って、階段を上り始める。
直斗は部屋につくと、クッションを床に置いた。
「遥香座りな。」
「ん・・・」
私はクッションの上に腰を下ろす。
「・・・遥香、なにがあった?」
直斗は優しく聞いてくれる。
「・・・お母さんが、私の部屋を片付けてたの。」
「片付ける?」
直斗はいまいち意味を理解していないようだった。
「うん。・・・遺品整理ってやつだと思う。」
すっかり涙も止まった私は、家であったことを直斗に話した。
"遺品整理"と言う言葉に、直斗は驚きを隠せないようだった。
「は・・・?遺品整理って、遥香・・・」
もう中学2年生にもなれば、"遺品整理"がどういう意味を表すのかも分かる。
それを知った上で、私はこの言葉を使ったんだ。
直斗もそれには気づいているようで。
「どうしよう・・・。私の居場所、なくなっちゃうよっ・・・!!」
また涙がじわじわと浮かんでくる。
これ以上、居場所を失いたくない。
本当は涼香になりたくなかったのに。
それなのに涼香になって、居場所がどんどんなくなっていって。
もう嫌だ。
「・・・遥香、大丈夫だ。遥香の居場所はここにある。」
「・・・っ本当?」
直斗は私の頭をワシャワシャと撫でながら、ニカッと笑った。
「本当だ。お前は涼香じゃない。遥香だ。」
────────ガチャンッ!!!
ドア付近から食器を落としたような音が響いた。
反射的に私と直斗はドアの方を見た。
なに?だれ?
────もしかして今の会話聞かれた?