君は私の人生の、輝く太陽。
***
「涼香ー!おっはよー!」
「お、おはよ!?」
最近朝は私の元に来ていなかった莉子ちゃんが、とんでもなくハイテンションで挨拶をしてきた。
突然のことに驚きを隠せない。
「・・・あのさ、話したいことあるから、ちょっといい?」
莉子ちゃんの雰囲気がいつもと少し違う。
「うん、分かった。」
私は静かに席を立つ。
チラッと時計を見ると、HRが始まるまであと15分だった。
莉子ちゃんの後ろをついていく。
私たちの間に流れている空気はとても重たいもので。
ため息がこぼれそうになる。
人気のない、別棟の廊下。
莉子ちゃんは、立ち止まり、振り返った。
いつもの笑顔ではなく、無表情で。
正直、怖いと思った。
「え・・・と、莉子?話ってなに?」
出来るだけいつも通りに話しかける。
顔が引き攣らないように。
「・・・あのさぁ、まじウザイんだけど」
いつもより低くて冷たい声。
驚きで声も出ない。
「私も直斗君のこと好きなんだよねぇ!もともと、涼香が直斗君と幼なじみだったから友達になったわけ」
なにそれ。
つまり利用されてたってこと?
涼香も、涼香になった私も。
「そしたら涼香が直斗君のこと好きって言うじゃん?まじ超うざくってさぁ。」
甲高い声で笑う莉子ちゃんは、私の知っている莉子ちゃんではなかった。
「まぁ直斗君は遥香ちゃんのこと好きみたいだったから、よかったんだけどぉ。遥香ちゃん死んじゃったじゃん?別にどうでも良いんだけどっ!」
私が死んでも、どうでもいいんだ。
所詮、直斗を涼香と付き合わせないためのコマに過ぎないんだ。
「それで、死んだから、直斗君が最近涼香とばっかいんじゃん。まぁ顔は全く同じだし?アンタら似てるから心変わりしてもしょうがないんだけどぉ」
きゃらきゃらと笑う莉子ちゃんが、悪魔に見えてくる。
そんな訳ないのに。
「直斗君が涼香のこと好きになったら、付き合っちゃうじゃん。私はそれ嫌なんだよねぇ。」
莉子ちゃんはなにを言ってるの?
つまり、私が邪魔ってこと?
「私は1度も友達だと思ったことなんてないし、まして親友だなんて笑わせないでくれる?」
さっきまでの悪魔のような笑みから、突然無表情に変わった。
「アンタさぁ、邪魔なの。双子のお姉ちゃんと一緒に死ねばよかったのに。」
なんでそんな事言えるのかが分からない。
「じゃあね〜!私は教室戻るわ〜」
莉子ちゃんはニコニコと笑って、手を振りながら去っていった。
私はその場に座り込む。
「はぁ・・・もうやだなぁ」
瞳に涙が滲む。
「大丈夫、私は強い。泣くな、泣くな。」
自分に言い聞かせる。
もう泣かないって決めたんだ。
瞳に滲んだ涙をゴシゴシと袖で拭き取る。
「・・・よしっ!」
ペシッと自分の頬を両手で挟むようにして叩く。
私は立ち上がった。
教室に向かう。
大丈夫だ。
直斗がいる。
おばあちゃんや、おばさんもいる。
莉子ちゃんがいなくても、私は1人じゃない。
それにもう泣かないって決めたんだ。
深呼吸をしてから教室のドアを開けた。