君は私の人生の、輝く太陽。
「お母さーん!直斗の家行ってくるー!」
私は階段を降りながら、リビングにいるお母さんに声をかけた。
「いってらっしゃい。7時には帰ってきなさいね。」
お母さんの言葉に、はーい!と返事をして家を出た。
ピンポーンとインターホンを鳴らす。
「あら、遥香ちゃん。ちょっと待ってね。」
すぐにおばさんの声が聞こえてきた。
玄関のドアが開き、おばさんが笑顔で迎えてくれる。
「いらっしゃい。直斗は上にいるわよ。」
「お邪魔しまーす!上行きますね!」
私は階段を駆け上がった。
「直斗ー!」
ノックもなしに直斗の部屋のドアを開ける。
見慣れた直斗の部屋。
そこには、勉強机に向かう直斗の姿があった。
「おまえなぁ。ノックくらいしろよ」
呆れたような顔をした直斗。
ノックなんてしたことない。
物心ついた時には一緒だったんだから、仕方ないじゃん?
「あははっ、ごめーん!」
「・・・悪いと思ってないだろ」
そう言う直斗も笑っていた。
おばさんが階段を上ってくる音が聞こえて、すぐに部屋を出る。
おばさんからジュースとお菓子を受け取って、また部屋に戻った。
真ん中に置かれた小さなテーブル。
その周りに座布団を敷いて座った。
私の、ピンク色の座布団。
直斗の黒い座布団。
部屋に置かれたもうひとつの水色の座布団は、涼香のもので。
私と涼香は色違い。
もう座られることがない、主がいなくなったその座布団が、やけに寂しそうに見えた。
無言が続く私たち。
なんて切り出せばいいのか分からない。
「・・・あのね」
私は目を伏せながら話し始めた。
「莉子ちゃんに、ウザイって、キモいって・・・涼香と一緒に死ねばよかったのにって言われちゃった。」
私凄い嫌われてるみたい、そう付け足した。
へへっと自嘲するように笑った。
直斗は悔しそうな顔をした。
「ごめん、守れなくて。」
私は静かに首を横に振った。
「直斗には充分守られてるよ。直斗がいなかったら・・・」
『自殺してたかもしれない』とは言えなかった。
「泣きたかったら泣いても────」
「私ね、もう泣かないって決めたんだ。」
直斗の言葉を遮って私が言う。
「なんで・・・」
直斗は訳が分からない、というような顔をした。
「だってさ、私は今涼香なんだよ。涼香になりきらないといけないんだ。涼香は全然泣かなかったでしょ?・・・涼香の方が妹なのに、しっかりしてたよね。」
私はふふっと笑った。
直斗は悲しそうに眉を寄せた。
「なんで遥香がそこまで・・・」
私は直斗の言葉に、微笑んで誤魔化した。
これ以上直斗と話していると、寂しいと、悲しいと言ってしまいそうで。
私はコップの中のジュースを一口飲んで立ち上がった。
「・・・直斗、ゲームしに行こう!」
直斗も、一瞬顔を歪めたけれど立ち上がった。
私は今の悲しそうな直斗の表情に、気づいていないふりをした。