君は私の人生の、輝く太陽。
頬の熱が冷めてから、リビングに戻った。
リビングで、おばさんと直斗とテレビを見ながら話していた。
────ガチャ
家の中に響いた玄関のドアが開く音。
それは直斗のお父さん────つまり、おじさんが帰ってきたことを意味する。
おばさんと直斗が立ち上がり、玄関へと向かう。
────私も行かないと。
直斗たちのあとを追った。
「おかえりなさい。」
「おかえりー。」
「あぁ、ただいま」
物腰の柔らかいおじさん。
その立ち居振る舞いと変わらず、性格もとても優しい。
でも、なんとなく少し気まずくて。
「・・・お邪魔してます。」
おじさんは私に視線を合わせると、動きが止まった。
直斗が、おーい、なんておじさんの前で手を振った。
おじさんが、ハッとしてさまよっていた視線を私に合わせた。
「え、と・・・なんで涼香ちゃんが?これから帰るの?」
「あ・・・」
直斗の家で"涼香"と呼ばれたことにショックを受けた。
おじさんには話していないから当たり前なんだけど。
言葉が喉に詰まって出てこない。
「父さん、とりあえず中入りなよ。」
私の様子を見て、直斗がおじさんにそう言った。
おじさんは、直斗とおばさんを怪訝そうに見る。
そして、最後に私を見て────・・・
優しくニコリと微笑んだ。
「え・・・?」
てっきりなにか言われるかと思ったのに。
おじさんは私の横を通り過ぎた。
────その時。
ポンッと私の頭に手を乗せた。
驚いておじさんを見上げると、さっきと変わらず優しく微笑んで、
「ゆっくりしていきなさい。」
と言った。
それだけ言って歩いていくおじさん。
胸がじーんと熱くなって。
きゅっと喉がしまる。
喉の奥が痛い。
なに、これ。
────・・・そうか。
私は泣きそうなのか。
なんで、なんて分からない。
ただ、おじさんの優しさが、なにも聞かないその優しさが胸に染みた。
それから、私たちはまたリビングに戻った。
それぞれが、それぞれの椅子に座る。
ちなみに、私と涼香、直斗はそれぞれの親がいない時等にお互いの家でご飯を食べている。
だから、私と涼香の椅子もあるわけで。
それぞれの椅子が決まっている。
私は、遥香の席に座った。
そんな私を、おじさんは不思議そうに見る。
きっと、なんで自分の席に座らないんだ、と疑問に思っているのだろう。
おじさんにも、話そう。
私はそう思って、話を切り出した。
「・・・あの、おじさん。」
おじさんは優しく微笑んで、目を合わせた。
一瞬体が、顔が、強ばる。
それでも私はそこで止めることなく、全てを話した。
私が遥香だということも、何故涼香になったのかも。
それから、おばあちゃんには話してあること。
何故今日泊まることになったのか。
────それから、学校であったこと。
全てを話していくうちに、少しずつ心が軽くなっていった。
おじさんは辛そうに、でも微笑みながら私の話を聞いてくれた。
最後まで聞き終わると、おじさんは缶ビールを1口飲んだ。
「・・・これからも辛くなったらこの家に泊まっていきなさい。遥香ちゃんの居場所はちゃんとここにあるからね。だから、辛くなったり苦しくなったりしたら、迷わず相談しなさい。1人で溜め込まないように。」
「でも、迷惑だし、心配なんて、かけられません・・・。」
視線を下に落とす。
「遥香ちゃん。迷惑も心配もたくさんかけて、共有することが、一緒にいるってことなんだよ。一緒にいても共有しなかったら、ひとりでいるのと同じなんだ。」
その言葉は、私の胸にストンと落ちて。
その通りだと思った。
どれだけ一緒にいても、一人でため込んでしまったら、それは1人でいるのと変わらない。
それに、もし直斗が辛いことや苦しいことを1人で溜め込んでなにも話してくれなかったら、悲しいし、力になれていないことがとても悔しく思う。
私は今まで直斗達に、そういう思いをさせていたんだ。
たくさん貰った恩は、頼ることで返せる。
そして、それを3人も望んでる。
これからは、もっと頼ろう。
私はそう思った。