君は私の人生の、輝く太陽。
「ただいまー!!」
聞こえてくるはずの声が聞こえてこない。
「・・・買い物かな?」
お母さんがいない。
いつもなら、買い物だと思い、それ以外はなにも思わない。
けど今は。
少し安心した。
家にお母さんがいなくて安心するなんて、どうかしてる。
今までではありえない。
まあもう、"今まで"とは全てが違うのだけれど。
階段をのぼる。
廊下の突き当たりの右側。
私は涼香の部屋に入った。
ため息をこぼしながら、部屋着に着替える。
なんか疲れたなぁ。
いろいろあったし。
そういえばここ最近、ずっと気を張っていたかもしれない。
ベットに寝転がり、天井をぼーっと見つめる。
「ただいま〜」
・・・お母さんの声だ。
おかえりなさいって言わないと。
私は重い体を起こして玄関へと向かう。
「おかえりー!」
また笑顔を貼り付ける。
お母さんは気づいてないでしょう?
事故にあった日から、あまり笑っていないことに。
「・・・上にいるね!」
私は二階に行った。
お昼を食べにリビングに行かないといけない。
でもあんまりお母さんと二人になりたくない。
「────遥香ーー!」
突然名前を呼ばれて目を見開く。
私は窓を開けた。
「直斗、どうしたの?」
涼香の部屋なら直斗と会話ができる。
「ん?あーご飯食べに行こーぜ!」
「おっけー!すぐ準備するー!」
「おー」
部屋着から少しお洒落な洋服に着替える。
髪も編み込みをして、ちょっとだけお洒落に。
・・・お化粧は出来ないけれど。
「お母さん、直斗とご飯食べに行ってくる!」
「あらそうなの?・・・はい、お小遣いね。7時には帰ってくるのよ。行ってらっしゃい。」
お金を渡しながら微笑んだお母さんは、少し寂しそうに見えた。
でも私は、そんなお母さんの表情に気付かないふりをする。
「うん!分かった!行ってきまーす!」
やっぱり私は最低だ。
お母さんが寂しそうにしてるのに、知らないふりをして。
自分が楽な方へいこうとしてる。
ごめんね、お母さん。
「おせーぞー」
門の外では、もう直斗が待っていた。
「これでも急いだの!」
私は直斗の元へと急ぐ。
「・・・どこ行く?」
直斗は私から目をそらした。
私なんか変なのかな?
まぁいっか!
「んー・・・。ファミレスでよくない?」
そんなにお金も使えないし、と付け足した。
「そうだな!んじゃ行こ!」
直斗はニカッと笑って、私の手を取った。
え、ちょ、待って!?
て、て、て、手繋いでる!?
え、あ、いや、まぁ、うん。
か、カレカノだし?
手ぐらい繋ぐよね?
うん、何も変なことはない。
「遥香?顔赤いよ?」
な、こいつ・・・!
恥ずかしいんだよ!
直斗のバカ!
なんて言えるはずもなく。
「な、なんでもないよ!」
そう言って、下を向いた。
チラッと直斗を見れば、首を傾げていて。
くっそ、男のくせに可愛く見える!!
突然直斗は、ひらめいた!みたいな顔をした。
「遥香、照れてんの?」
「なっ!!!」
一気にカァッと顔が熱くなる。
「へぇ?照れてるんだ?」
なにそのいたずらっ子みたいな顔!!
すっごいムカつく!
「・・・っそうだよ照れてるよ!なんか悪い!?」
・・・あれ?
私今、なんて言った?
自分の中で、自分の言葉を繰り返す。
"そうだよ照れてるよ!なんか悪い!?"
あぁぁぁあ!!
やっちゃったよ、どうしよう!?
え、待って、すっごい恥ずかしい!!
私自爆してんじゃん!
真っ赤になりながら直斗の顔を見る。
「え・・・」
直斗の顔はゆでダコみたいに真っ赤で。
そんな直斗を見ると、おかしくなってくる。
「あははっ!直斗、顔!!真っ赤じゃん!」
私はお腹を抱えて笑う。
あぁ、幸せだ。
やっぱり直斗といるのが一番楽しい。
そんなことをしていると、もうファミレスで。
2人で顔の赤みが引いてから、中に入った。