君は私の人生の、輝く太陽。
「きれい・・・」
目の前に広がる鮮やかな黄色。
それはまるで、絨毯のようで。
風で靡く(なびく)姿がとても輝いて見える。
「元気でた?」
「え・・・?」
直斗は私の顔をのぞき込む。
もしかして、私を元気づけるためにここに連れてきてくれた?
「元気でたよ。・・・私が元気なさそうだったから?」
私がそう聞くと、直斗は少し目を泳がせて、恥ずかしそうに笑った。
「花好きだったろ?・・・花言葉とかも分かんの?」
「うーん・・・。花は好きだけど、花言葉はあんまり分かんないな〜。お母さんが教えてくれたのだけだよ。」
「おばさん花好きだもんな。いつも庭に花咲いてるイメージ。」
「そう?今は咲いてないよ。最近は・・・クロッカスだった。」
「クロッカス?ごめんわかんないや。」
直斗が申し訳なさそうにわらった。
「大丈夫だよ。みんな分かんないもん。・・・あれ、そういえばクロッカスの花言葉は教えてくれなかったなぁ・・・。」
「いつもは教えてくれんの?」
「うん。」
私は直斗から菜の花に視線をずらした。
「遥香はさ、まだ不安?おばさん達とのこと。」
直斗の声が空気を揺らす。
さあっと風が駆け抜け、目の前の菜の花を靡(なび)かせた。
「・・・不安だよ。本当は要らないんじゃないかって、涼香の方がいいんじゃないかって思うよ。」
涙がこぼれ落ちそうになる。
私は一生懸命涙を堪える。
「菜の花の花言葉はね、四つあるんだ。"快活・明るさ・豊かさ・小さな幸せ"。・・・全部お母さんが教えてくれたの。」
「花言葉か。・・・花言葉?」
直斗がなにかを考えるように、眉を寄せた。
「直斗?」
「遥香。花言葉だ。確かクロッカスが咲いてたんだよな?」
直斗がスマホを片手に、確認するように聞いてきた。
それに私が頷くと、直斗はすぐにスマホを操作し始めた。
「なぁ、何色のクロッカスが咲いてた?」
「え?えと、青と白だよ。」
「やっぱり。」
直斗がスマホを操作する手を止めた。
直斗の瞳に私が映る。
「遥香は愛されてるよ、充分。」
直斗は優しく笑った。
「え・・・」
「青いクロッカスの花言葉は、"心配ながら信じる"。白いクロッカスの花言葉は、"あなたを待っています"。」
初めて聞くクロッカスの花言葉に言葉を失った。
だって、お母さんは育てる花の花言葉を全部知ってるから。
今までも、全部知っていた。
だから悪い意味の花言葉の花は、どんなに綺麗でも育てない。
そんなお母さんが、クロッカスの花言葉を知らないわけがないんだ。