君は私の人生の、輝く太陽。
「おばさんは、遥香の事を信じて待ってたんだよ。家を出ていって、心配だったけど待っていた。遥香が帰ってくると信じて。」
お母さんは、私のことを待っていてくれた?
心配だけど、私を信じて、待っていてくれた?
お母さんは、ちゃんと私を愛してくれてたの?
それとも、涼香を心配してた?
私の写真の前。
そういえばいつも花が供えられていた。
今日は、なにが供えられていた?
記憶を巡らせる。
「────キンセンカ・・・」
「え?」
「そうだ。私の写真の前に供えられていた花はキンセンカだ。」
直斗はそれを聞くとすぐにスマホの操作を始めた。
直斗の指が止まる。
「キンセンカの花言葉は────」
ごく、と唾を飲み込む。
「別れの悲しみだって・・・」
一瞬、息をするのも忘れた。
目の前にいる直斗が、歪んで見える。
私はちゃんと愛されてた。
それはすぐに気づくことが出来たはずで。
本当は、花言葉を調べれば分かると気づいていたのかもしれない。
私はそれに気付かないふりをしていた。
もし調べて、自分が本当に愛されていなかったら?
そう思うと怖くて、気づかなかったことにしたんだ。
「遥香も涼香も愛されてたんだよ。いつだって2人は、ちゃんと愛されてた。」
優しい風が、私と直斗を包み込む。
「遥香」
直斗のいつもよりも優しい声に、顔を上げる。
「本当のこと、おばさん達に話してみないか?」
一瞬、時が止まったかと思った。
ほんとに一瞬。
でもそれは辺りに漂う菜の花の香りで、止まっていないのだと気付かされた。
「大丈夫だ。なんとかなる。なんなら俺も一緒に行くし、母さんだっている。父さんもいる。遥香のばあちゃんだっているじゃん。」
直斗が私の頭を優しく撫でる。
言葉にはしなかったけれど、直斗が"大丈夫だ"と言ってくれている気がして、凄く安心した。
さっきまで不安だったことはもう無い。
全部全部、無くなった。
今ならできる。
いつまでもこのままでいいなんて思ってない。
そんなこと思わない。
だから、今日、2人にちゃんと言おう。
直斗にも頼らない。
2人に向き合って。
一番逃げていたのは私だ。
また遥香として生きるために。
お母さんとお父さんに本当のことを話すんだ。
~クリスマスローズ「私の不安を和らげて」~