君は私の人生の、輝く太陽。




「あの日、いつも通り塾に行こうとしてたの。でも、急に雨が降ってきて、2人でコンビニに行ったんだ。」






膝の上で手をぎゅっと握りしめる。






あの日の事は、今でも鮮明に覚えている。






「2人で一本の傘を買って、少しお菓子を食べたんだ。気づいたら、塾に遅刻しそうになってて私たちは急いでコンビニを出た。ひとつの椅子に置いた私たちのバックを、なにも確認せずに取ったんだ。」






あの日、バックを取り間違えなければ、今でも私は"私"として生活できた?






今みたいに、涼香として生きなくてもよかった?






私は、涼香になりたくなかった。






「信号が点滅してて、私たちは走って横断歩道を渡ろうとしたんだ。」






自然と目線が下がる。






「・・・気づいたら、目の前に車があって。私たちは車に轢かれた。」







お母さん達が息を飲んだのが分かった。






「目が覚めたらね、お母さん達がいて。私は、"涼香"って言われた。その時は、全然理解出来なかった。なんで、"涼香"って呼ばれたのか。」






「え・・・」





お母さん達は、もう気付いたのかもしれない。






私は涼香じゃないと。






私は遥香なんだと。






「お母さん達は、持っていたバックで見分けたって言ったよね。・・・あの日、コンビニで、バックを取り間違えたんだ。」






「涼香じゃ、ないの?」






「遥香なのか?」






お母さん達から目をそらした。






「・・・そうだよ。私は遥香。涼香じゃないの。」






「・・・っそんな」






お母さんの瞳に涙が溜まる。






「ずっと、遥香だって気づいて欲しかった。」





私の瞳にも涙が溜まる。





「私は"私"として生きたいって、ずっと、思ってて・・・っ。でも、言えなくて。」





喉が痛い。





涙が零れ落ちそうになる。





「だから、辛くなって、おばあちゃんの家に泊まって・・・っ」






「もういい。もういいから。」






ふわっと私の体はなにかに包み込まれた。






漂ってくる香りは、お父さんの。





「・・・っお父さん!」





「気づけなくてごめんな。」





私は頭を横に振った。





気づかなくたって仕方ない。





だって私たちはあまりにも似すぎていたから。





「辛かっただろう?もう我慢しないで泣いていい。」






そんな事言われたら、必死でせき止めていた涙が零れてしまう。





「・・・っほ、んとは、辛くて、なんで、涼香と一緒に死ねなかったんだろって、思ってて。なんで、バックを取り間違えたのって、なんでなんでって、ずっと、考えちゃって・・・っ!」






私を抱きしめるお父さんの力が強まった。






「でもね・・・っ、退院した日に、直斗が気付いてくれたの・・・っ」





「直斗君が・・・?」





いつの間にか隣に来ていたお母さん。





私はコクンと頷いた。





「直斗と話してるところをたまたま聞かれて、おばさん達も知ってる。・・・それから、おばあちゃんも。」






まだ少し視界は歪んでいるけれど、もう涙はこぼれ落ちない。





ちゃんと言えた。





辛いとか悲しいとかいう感情よりも、その気持ちが大きかった。





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