君は私の人生の、輝く太陽。
キンセンカ
***
────今、私の前には直斗の家の門がある。
インターホンに手を伸ばす。
・・・緊張する。
なんで緊張するのか、理由は分かっている。
1つ目は、改名することを伝えるから。
もう1つは、引っ越すから。
まだどこに行くかは決まっていない。
けど、引っ越すことは決まった。
どこに引っ越そうと、直斗の家の隣ではなくなるのは確実だ。
それを伝えたら直斗は私から離れていくのかな。
もう会えなくなるのかな。
そんなのいやだよ・・・。
じわり、涙がにじむ。
「っ・・・泣いちゃ、ダメだ。」
私は瞳ににじんだ涙を、袖でゴシゴシと拭った。
少し震える指に気付かないふりをして、インターホンを押した。
「・・・はい」
おばさんの声が聞こえる。
優しいその声に、不安が少しなくなった気がした。
「あ、えっと────」
「あら遥香ちゃんじゃない。ちょっと待ってね〜」
話、遮られた。
ガーン、なんて呟いてると、すぐにドアが開いた。
「いらっしゃい遥香ちゃん。入りな〜」
私は、おじゃましまーす、と言って中に入ると、すぐに直斗の部屋へ向かった。
「・・・まだ寝てるし」
もう10時なのに、直斗はまだ寝ていた。
しかも爆睡。
なんかムカつく。
でも昔から直斗は起きなかったな。
よく涼香と一緒に起こしてたっけ。
「直斗〜」
直斗の体を揺すると、ゆっくりと目を開けた。
「・・・遥香?」
直斗はゆっくりと起き上がった。
まだ眠いのか、ぼーっとしている。
「ふふっ、おはよう直斗」
10年くらい前の直斗を見てるようで、なんだか可笑しかった。
「・・・おはよう遥香」
直斗は1度目をこすった。
そして、また私を見る。
その目はさっきまでとは違って、もうしっかりと私を映していた。