君は私の人生の、輝く太陽。
「・・・どうした?」
直斗にそう聞かれ、言葉に詰まる。
言おうって決めたのに。
話そうと思うと話せなくなる。
「ゆっくりでいいから、な?」
優しく笑う直斗を見て、また涙が滲む。
私の涙腺絶対崩壊してるよ。
「・・・っあのね、私、改名することになったよ」
泣かないで言えた。
涙を必死で堪えて。
手は震えているけれど、まだ涙は零れていない。
「かいみょう・・・??」
直斗は改名の意味を分かっていないようだった。
「あ、改名って言うのはね、名前を変えるってこと。」
直斗の動きが止まる。
・・・たぶん頭の中整理してるな、これ。
「・・・今の遥香は、戸籍上"涼香"だから、"遥香"に戻すってこと?」
「うん、そう。」
「良かったじゃん。ちゃんと遥香に戻れる。」
直斗はそう言って、いつものように優しく私の頭を撫でた。
顔をくしゃくしゃにして笑う直斗。
そんな直斗を見ると、引っ越すことを言いたくなくなる。
引っ越したくなくなる。
「・・・まだなにかあるんだろ?」
優しく微笑んだ直斗の表情に、胸がきゅっと締め付けられるように痛くなった。
ねぇ、直斗。私が引っ越すって言ったらどうも思う?
今まで通りの関係にはもう慣れないかもしれない。
もしこのまま付き合っていくのだとしたら、遠距離になってしまう。
遠距離になって、本当に気持ちが冷めないのかが怖くて。
直斗の私に対する気持ちが、どんどん薄れていくかもしれない。
そんなことを1人で考えて、涙が出そうになる。
でも一番怖いのは、私が直斗のことを好きじゃなくなることで。
私に気づいてくれたのは直斗だけなのに、離れたらそんな直斗のことを忘れてしまうんじゃないか。
怖い。離れたくない。
この町からは出ていきたいのに、直斗とは離れたくない。
それはただのワガママで、確実に叶わない。
「遥香。さっきも言ったろ?ゆっくりでいい。だから、ちゃんと遥香から聞かせて?」
直斗はまっすぐ私を見ている。
話さなきゃ。
手のひらに爪がくい込むくらい強く、手を握りしめた。
涙が瞳に滲む。
視界がぼやけて見えた。
「わ、私、私ね、・・・っ引っ越すことに、なったんだ」
声が震える。
ポタッと涙がこぼれ落ちた。