聖なる夜に~涙はそっと絡め取られて~


気分が高揚して、忘れていた。
アルコールが入った雄大は怒りっぽくなること。

「梓は、気分が高揚してるから、美味しく感じるだけだよ。あんなの普段食べても、対して何も思わないって」

「……え、そ、そうかな」

「あれなら俺でも簡単に作れる」

確かに雄大は料理が上手い。
家にいても、レストラン気分を味わえるような料理を沢山作ってくれる。

「高い金払わされたのに、なんか損。あんなのぼったくりだよ」

仮にも、今から甘い夜を過ごそうという瞬間にそんなこと、言う?
そんな愚痴、他の人とやってよ!!

「ま、いいや。梓、こっち来て。キスさせて」

急にコロッと態度を変えられても、はい、そうですか、なんて言えるわけがない。

「……梓?」

「レストランの人達にに失礼でしょ?」

思わず、ついて出た言葉。
あたしの反論が気に食わないのか、雄大の眉間に皺が寄る。

「作ってくれた方達だって、一緒に過ごしたい人がいるかもしれないじゃない?それを我慢してまで、あたし達を楽しませるために、精一杯作ってくれたものなんだよ?」

それを美味しくなかった、とか。
美味しいと感じるのは、気分が高揚しているせいだ、とか。

あなた、何様なの?

「それがあのひと達の仕事なんだから、分かりきったことだろ?それに、俺は梓にせっつかれなきゃ、わざわざこんな高い所泊まりにくる気もなかったし」

「なっ!?あたしがせっついたって!?」

「そうだろ?テレビ見て、あーいいなぁ。こんなとこクリスマスに泊まりたいなぁとか、毎回、毎回、聞かされてプレッシャーかけられたらなぁ」

わざとらしく雄大はため息をつく。

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