聖なる夜に~涙はそっと絡め取られて~
頭に一気に血が登ったあたしは、ここがずっと憧れていたホテルだということも忘れて、手に持つバッグを彼に投げつけた。
「何なの!?あたしが悪いっていうの!?」
怒り任せのバッグは、雄大を掠めることなく、ベッドの片隅に落ちた。
「女の憧れを話して、何が悪いの?無理してまで、連れていってほしいなんて、言ってないわよ!」
「言ってるだろ。心の声、めちゃくちゃ、聞こえてくるんだけど」
「だからって……!」
ここまで来て文句言うなんて。
「せっかく連れて来てやったんだからさ、少し黙ったら?」
うるさそうに、眉間の皺を深めた雄大が近づいてきて、あたしの頬に触れる。
そのまま目を閉じてキスしようとするから、あたしはその手を払い除けた。
この状況で、キスするとか、信じられない!
「誤魔化そうとしないで!あなた何様なの?何でそんなに上から目線なの!?」
駄目だ、それ以上言ったら駄目だ!という理性の声は効かなかった。
あたしの口から飛び出た言葉に、雄大は口を歪ませる。
「……もういいよ」