聖なる夜に~涙はそっと絡め取られて~
「もういい。別れよう。梓」
「雄大!?」
「俺もう疲れた」
「え!ちょっ……!?」
雄大は身を翻し、手に持っていたコートを着た。
素直にごめんなさいを言えばよかったのかもしれない。
別れたくない、と泣けばよかったのかもしれない。
だけど、突然の別れの言葉に、あたしは動けなかった。
「泊まりたかったホテルだろ?料金は出すから、梓、泊まって帰りな」
スタスタと歩く雄大の背中を呆然と見つめるあたし。
扉を開ける直前、雄大は不意にこちらを振り返り、言った。
「さよなら、梓。もう金輪際、連絡なんかしてくんなよ」
バタンっ
閉まった扉の音が虚しい。