聖なる夜に~涙はそっと絡め取られて~
クリスマスイブの夜に、高級ホテルでフラレる、間抜けな女。
そう思ったら、また涙が落ちてきて。
「……え……」
途端に、頬に感じた温もり。
それが島崎さんの唇だと気づいたのは、彼が離れたあとだった。
「島崎……さん……?」
「もしも……」
伏し目がちになって、呟く声があたしの心をざわつかせる。
「涙するあなたに一目惚れしたと言ったら、あなたは笑いますか?」
「……っ……!?」
何言ってるの?このひと……!
鼓動のテンポが速くなり、悲鳴を上げそう。
「な、何言って……」
「僕、これから上がりなんです。よければ、バーで一杯いかがですか?」
照れたような微笑みに、あたしは頷かずにはいられなかった。