Sだけじゃ、たりない。
一階へ降りてからわずか5分で身支度を整えた私は、超特急で自転車に飛び乗った。

私の通う高校は、【東高校】だ。どこにでもありそうな名前の、東高校、である。

私の家から高校へ行く途中には、心臓破りの上り坂がある。

キツいんだよね〜、これが…!

ペダルに思い切り重力をかけ、一気にペダルを漕ぎまくる。風で前髪が吹き飛ばされようが、関係ない。


「くぅ〜〜〜〜っ、きっつ!」


しかし坂を登ればすぐ高校だ。

私の家と高校は、この坂のテッペンと下で繋がっているようなもの。

それくらい、近い高校をわざわざ選んで入学したのだ。


「ヨォ、奈々!今朝も頑張ってんなぁ」


坂を登りきったところに、幼なじみである【神田 洋介】の家がある。

丁度、洋介もこれから登校するようだ。


「洋介…おはよう…ツカレタ……」


「はは、変な顔」


洋介にほっぺたを軽くつままれる。

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