Sだけじゃ、たりない。
「最低…!」


私はいてもたってもいられず、坂を猛スピードで走って降りる。


「奈々!」


仁が私を呼ぶ声も全部全部無視した。

一目惚れした、とか可愛かったから、とか言われるならまだしも『俺がお前にキスしたいと思ったから、した。』なんて…信じられない。

しかも、洋介がいなくなった瞬間、私のことをお前呼ばわり。

信じられない!最低!クズ野郎だ!

頭の中がグルグルする。


「ただいま〜…」


家にはまだお父さんもお母さんも帰ってきていないようだった。

ピロロン、という音とともにスマホが光る。


「うわ…」


仁からのLINEだった。トークを開いてみる。

『怒らせてごめん』

シンプルに、絵文字もなく、たった一文だった。
< 21 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop