仮に君と恋をしたなら



普段、通りすぎることはあっても決して中へ踏み込むことはなかった公園。巷でデートスポットとして有名な公園に、ついに恋人ごっこ中の親友と来てしまった。

別にもとは普通の公園なのだから誰でも利用できる公共の場。なのにとても敷居が高く感じられる入口。

まず公園の名称が愛育北公園(アイイクキタ コウエン)。愛を育みに来るべき公園とされる所以で、その名称が彫られている大きな岩も少し無理矢理だがハート型に見えなくもない形をしている。

カップルにはそれが紛う事なきハートに見えているのだ。



「来たぜ、愛育北公園!」

「本当にね…。真山、来たことあんの?」

「チャリで前と中、通ったことくらいはある」

「中、通ったの?勇者だね」

「おう、即効後悔したぜ」



後悔したんだ…。私もこれからするんだろうな…。



「ねぇ、この岩どう見える?」

「どうって…、ハートに見えるかってこと?」

「そう」

「見えーねーだろ。山田は?」



見えない。



「せいぜいパプリカってとこじゃない?」

「あー、分かる。下の方もっと削りゃ見えなくもないよな」

「何で削んないんだろ?」

「手加えたら、パワー的なモノが下がるんじゃね?」

「何パワーって」



私たちは入口の岩談義をかれこれ30分近くしていた。まだ、一歩も中へ足を踏み入れていない。



< 31 / 95 >

この作品をシェア

pagetop