仮に君と恋をしたなら



今、この先も真山に好きな人が出来なければ良いのになんて思ってしまった。

どうして、小さな世間が居場所を左右する力を持っているんだろう。誰と仲良くしても自由なはずなのに。小さな世間のルールが蜘蛛の糸のように感じられて、絡まって身動きが取れなくなることを恐れて、結局抗えず何かしら自ずと制限をかけてしまう。

強靭な精神や無神経であれば解決するようなことなんだろうか。それも違う気がするな。

悠と紫がどうというわけではなくて、もっと根本的なところで私は引っ掛かっている。けど、面倒ごとにしたくない。その選択が正しいのか間違っているのか本心がどうあれ、平気で裏を選べてしまう自分が気持ち悪い。

小宮とも普通に仲良くしたいけど、そうすることで真山と居ることが危ぶまれるなら、小さな世間なんかの為に制限を掛けよう。真山と居る為と言い聞かせでもして。愚かで弱くて面倒に立ち向かえない自分は見ない振りして。



「…だ、おい山田!」



私はごちゃごちゃ考えを巡らせている間に教室に入り、自分の席に着席し、一限目の支度まで終えていた。真山の呼び掛けにさえ、直ぐに気づかなかった。



「真山…おはよ」

「お前、変な顔してるぞ」

「…、朝イチから失礼だな」

「違くて。心配してんだけど」



鋭いな、真山。




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