ピンク色のスポットライト
―３年前―




柚羽は小学4年生だった。


中学受験を予定していた柚羽は塾に通っていた。

その日は塾の帰りに祖母の家に行くため母親と待ち合わせをしていた駅へ向かい、改札のそばで立っていた。



“あと5分くらいで着きます”

母親からそうメールが来た、その時...



「すみません」

声のした方を見ると、知らない男性が立っていた。


「...はい...？」

「今、ちょっと大丈夫ですか？」

「あ、はい...」

「よかった...」

そう呟いて微笑むと、内ポケットから何かを取り出し、また話し始めた。


「あの...CMとかドラマとか興味あるかな？」

「えっ？」

「急に言われても困りますよね笑
もし、テレビに出ることとか、ちょっとでも興味あったらここに連絡してもらえますか？」

その男性は柚羽に名刺を渡そうとしたが、柚羽は名刺を見て戸惑っていた。


「テ、テレビ...」

「あ、うん。えっと、芸能事務所って分かりますか」


男性は優しい笑顔を浮かべて、柚羽に問いかけた。


「いえ...」

「そうですよね(笑)
まあ、簡単に言えばうちの事務所は、芸能人のお家みたいな感じかな。それで、嫌じゃなければ、君もどうかなって。」

「...私が、そこに入るってこと、ですか...？」

「そうだね、そんな感じかな。お母さんとかにも相談してもらって、ここに書いてある番号に電話してくれるかな？」

「はい...分かりました」

「ありがとう。じゃあ、よろしくお願いします」



そう言って男性は名刺を渡すと、柚羽の元から去っていった。



これが、この数分のやりとりが、
柚羽の人生を変えるきっかけになった。

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