ピンク色のスポットライト
「お待たせ、柚羽。
...それ、どうしたの?」
「あぁ……なんか、芸能事務所?の人が...」
柚羽はそう言いながら母親に名刺を渡した。
「それ、スカウトって、こと...?
すごい……」
「え...?」
「すごい...すごい、すごいじゃない」
「そう...なの?」
「柚羽、やるわよね」
「え、あ、あの...」
「柚羽さえ良ければ、お母さんすぐに電話するわよ」
「ちょ、まってよ。テレビ、だよ?
なんで...笑どうして私が...」
「できると思われたのよ、きっと。声をかけてくれたこの人が、柚羽を選んだの」
「あの人が...」
「やるだけやってみよう、ね?柚羽」
「……うん...」
柚羽の記憶にあるのは、このくらいのこと。
その後お母さんが電話をかけたことも、祖母の家に行ったことも、記憶にはなかった。
そして何より、
声をかけてきた、あの男性のことが柚羽の記憶にはっきりと残っていた。