ピンク色のスポットライト


スタッフ「お疲れ様でしたー 」


柚「お疲れ様でした! 」


撮影が終わると朝日奈がスタジオに柚羽のもとに駆け寄ってきた。


朝「少しずつ慣れてきてるね」

柚「はい、ありがとうございます」



二人で楽屋に戻る。



柚「そういえば、最近神崎さんは...?」

朝「ああ...なんか、事務所の人とよく話し合ってるけど…」

柚「そうなんですか...」



Teenという雑誌の撮影以来、柚羽は神崎を見ていなかった。






スカウトしてくれた張本人だということもあって、柚羽は慣れない現場や事務所で神崎の姿を見ると、少し安心感を抱いていた。





朝「ゆうちゃん、今日は明日の本読みしたら帰ろっか」

柚「はい。お願いします」

朝「はぁい。じゃあ...10ページから。
……もう一度部屋に戻ると、兄の姿はなかった。」

柚「お兄ちゃん?ねえ、お兄ちゃん!」

朝「さくらがベランダに出る。」

柚「...あなた、だれですか?」

朝「...」

柚「お兄ちゃんはどこ...?」

朝「さくらに聞かれて答えようとすると、」

―バイブ音

朝「...ちょっとごめん」


手元の携帯がなって朝日奈が楽屋の外に出る。


朝「―もしもし」

『朝日奈、ゆうちゃんどう?』

朝「そのことなら、僕も認めます。ゆうちゃんは才能持ってますよ。今台詞読みしてたんですけど...ぶっちゃけその辺の役者よりも気持ちが入るのは早いですね」

神「ゆうちゃんはまだ若くて純粋だから、素直に感情を表せるんだ。妨げるものが何もない。」

朝「ストレートに伝わってくるんですよね、ゆうちゃんの台詞は。本当にゆうちゃんの言葉みたいに。まあ、本人はさすがにそんな自覚はないんでしょうけど」

神「その感覚を大切にしたい。自覚してないってことが、ゆうちゃんの良いところなんだ。でも...ずっとそのままでいられないことも分かってる」

朝「というのは?」

神「芸能界だぞ。純粋さも本人らしさも維持するのは難しくなってくる。俺は、ゆうちゃんに投資をしてもいいと思っている。」

朝「投資...?」

神「今のゆうちゃんを手放したくない。」

朝「神崎さん...現場に来てあげてくださいよ。ゆうちゃん、不安だと思いますよ。確かに僕はマネージャーだけど、やっぱり神崎さんにしか与えられない安心感があるんです。」

神「まあ......そのうちな。」

朝「あの...お聞きしたいことがあるんですけど...」

神「あぁ、ちょっと...ごめん。呼ばれたから、またな。」

朝「あ……はい...」





朝日奈は1人で携帯を切った。
< 7 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop