私達は無敵
とくに乾杯などせず、それぞれが勝手に飲み始めるのも私達流。
「うわ。これ美味しい。どうしたの?」
「秋にデンマーク行ったの。ついでにパリに寄って買ってきた。」
「へ~。デンマーク。観光?」
「観光。」
「千尋のも。これ貴腐ワインじゃないの。どうしたの?」
「それは、職場の麻呂様が譲ってくれたの。」
「ああ、京大の麻呂様ね。それ絶対、千尋に気があるよ。」
「んなわけないじゃん。ちゃんとお金払ったよ。」
「お金払ったって、なかなか手に入らないよ。これ。」
「それより、美樹の新しい男よ。どんな人なの?」

とりとめのない近況報告に、職場の愚痴。そして恋愛。

「職場の上司?」
「すっごい仕事できるし、気配りもできて、素敵な人なの。」

 今度の美樹の彼は仕事の上司で、とても優秀な人らしい。彼女を時に厳しく、時に優しく指導してくれる。彼女にとって無くてはならない人なのだそうだ。そこそこ年上の優秀な上司がどうして今まで独身なのか。ちょっと勘ぐってしまう。

 美樹はいつでも恋にも仕事にも全力投球だ。相手の全ての想いに応え、相手に尽くし、相手の趣味を学び、相手の持っているもの全てを吸収してしまう。だが、しばらくすると物足りなくなって別れる。新しい恋をする度に、強く、美しく、輝きを増す彼女。

「奥さんがわがままな人で、子供もまだなのに、ずっとレスで、家庭内離婚なんだって。」

うわ。不倫かよ。美樹、大丈夫??
< 2 / 14 >

この作品をシェア

pagetop