私達は無敵
「美樹、不倫はどうかと思うよ。」
 葉子がはっきりと釘を刺すと、美樹も分かっていたのだろう。言い訳が始まる。

「私も割り切ってつきあってるの。別に結婚とか考えてるわけじゃないから。」
 そう。美樹は男と1年続いたことがない。不倫を放置したって大したことにはならないだろう。でも

「職場の人と拗れると後が面倒じゃない?」
私が言うと、
「大丈夫。異動の多い職場だし、別れても上手くやって行ける自信あるから。大人の関係よ。」
 そんなものなのかな。美樹の感覚はよく解らない。だけど、美樹が納得してるなら、私達は何も言わない。見守るだけだ。

「ああ、こんな部屋にサクッと泊めてくれるような、素敵な男、どこかに落ちてないかしら?」
 今は上司に夢中でも、イイ男が現れればいつでも乗り換える気満々。美樹の価値観は私とは違う。

「葉子は?相変わらず?」
「上司が無能すぎて嫌になる。」
 葉子は男と付き合わない。だからといってレズでもない。彼女のこのスタンスは、彼女の家庭環境に起因している。葉子の話では、彼女の両親は男尊女卑が染み付いていて、彼女より出来の悪い弟に期待を寄せる。

「あの職場に未来は無い。早いとこ転職したい。」
 葉子の働く環境は気の毒としか言いようが無い。
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