私達は無敵
 進学校だった私達の母校では、女子もほとんどが4年生の大学に進学した。なのに葉子は親に短大しか受験することを許されなかった。最近は派遣を使う会社が増えて一流企業では一般職で採用される女子も4年生大学を出ていることの方が多い。短大卒の葉子は就職活動でも苦戦した。今は地方信用金庫の一般職で働きながら総合職への転職を狙ってはいるが、短大卒という学歴は一生彼女に付いてまわる。
 もっと偏差値の低い高校へ入学した葉子の弟は、浪人して三流の4年制大学へ通っている。親にとっては、長男が跡取りなのかもしれないが。私が葉子でもやりきれない気持ちになるだろう。葉子はその才能を持て余し、すでに職場ではお局状態らしい。今いる年上の上司も無能だが、これから先も自分より年下の、自分より無能な男が、4年生の大学を出たと言うだけで、最初から彼女の上司になるべく入社してくるのだから、未来に希望など持てるわけがない。

「いっそ趣味で身を立てられないかなぁ。。」
 私達3人は趣味でエッセイや漫画を描く。葉子ならば本気で目指せば、あるいはプロになれたかもしれないが、今となっては遅すぎる。30過ぎてデビューする漫画家など聞いたことがない。それはそれで、あまりに現実味の無い話だ。葉子は金融などではなく、いっそ雑誌社とかに就職すれば良かったのに。
 彼女の堅実な職選びもまた親の影響だったのだろう。短大を出て金融で一般職、給料の高い男と結婚して家庭に納まるのが女の幸せ。いつの時代の話だっつうの。
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