私の王子様はあなただけ
篤に差し出された手を取って、立ち上がる。お母さんの顔を見ると、笑い泣きしていた。その表情にまた涙が溢れる。


篤がこんなサプライズプレゼントを用意してくれているなんて思ってもみなかった。本当に、本当にありがとう。


「真琴、今日は部屋とってるから。行くぞ」


お母さんが見えなくなるまで、手を振った後、ボソッと篤が呟いた。これだけでも十分なサプライズプレゼントだったのに、それ以上にまだ部屋まで取ってくれていたなんて。

フロントで鍵を受け取り、エレベーターで連れて来られた場所は、二十一階。降りた瞬間、広がるのは赤とゴールドのフロア。


そのまま進むと篤が「ここだから」と立ち止まり、ドアを開けてくれた。


「すごい。なにこれー!」


部屋に入って、一番に目に入ったのはベッドの前にある大きな窓。そこから見える景色は、圧巻。時計の針は、もうすぐ五時。

十二月の今頃は五時半にもなると陽が落ちるから、もうすぐ夜景が堪能できる。


「すごいよ、篤。ここ、高かったでしょ?」


「バカ!そんなのは気にするんじゃねえよ」
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