私の王子様はあなただけ
気にするなと言われても、こんな豪華な部屋、絶対、高いに決まってる。しかも今日はクリスマスイヴ。


予約だってかなり早いうちからじゃなきゃ取れなかったんじゃないかな。だとすると篤はだいぶ早くからこのサプライズを考えていてくれたの?


「なんだかさ、高級すぎて落ち着かねえな」


そう言いつつ、大きなツインベッドに腰掛ける篤。私も「そうだね」と言って彼の隣に腰を下ろした。大きな窓から見える景色は少しずつ夜景へと変化を遂げる。


本当に場違いもいいところ。セレブならシャンパン片手にかっこよく過ごすのだろうけれど、私たちはこぼしてしまうと大変だという庶民脳。結局、何もせず窓からの景色を見ながら「すごい」という言葉を繰り返すだけ。


「そろそろ、覚悟決めるか」


篤がそう言って立ち上がる。さすがにもう私でもここにこうして連れて来られた時点で彼の考えてくれていたサプライズは分かっている。でも、私は篤の会話に相槌を打つだけ。



篤がきっと自分のタイミングで言ってくれると思っていたから。とはいえ、一時間を過ぎたあたりからはさすがに少し、アクションを起こそうかと考えたけれど。窓の外はもうキラキラの宝石のような夜景が広がっていた。
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