極上な彼の一途な独占欲
私の声に潜んだ棘を感じたんだろう、葵ちゃんの顔が緊張に強張った。

あれ、私、なんでこんなきつい声出しているの。


「伊吹さんはクライアントだよ。それを報告するならまず私か暢子にでしょう」

「あの…もちろん後で美鈴さんにもと思って、でもさっきちょうど伊吹さんとお話できたので…」

「それは頭越しって言うんだよ、順番が違う」


それくらい、いいじゃない。

部屋に入れたのだって、女の子同士だし事務所も同じだし、遊んだというよりは情報交換だろう。仕事熱心な彼女のしそうなことだ。

こんな、わざわざ叱責するようなことじゃない。


「も、申し訳ありません…」


葵ちゃんは涙を浮かべ、必死に謝罪している。

その姿を見て、自分への嫌悪感に吐きそうになった。なにをしているの私、最低だよ、最低だ。

だけど、伊吹さんがこの子に向けた笑顔を思い出すだけで、頭の中が黒いもやもやに塗りつぶされる。

ポケットの中で、まだ熱を持っている携帯を握りしめた。

そのとき、葵ちゃんの肩越しに、こちらを見ている伊吹さんと目が合った。その目は、意外そうな驚きに見開かれていた。

見られた。

こんなみっともない、マネージャーとして最悪のことをしているところを見られた。

手の中の携帯。

涙をこらえる葵ちゃん。

伊吹さん。

立っているのもつらかった。

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