極上な彼の一途な独占欲
「車で食おうと思ってたんだ。サンドイッチのお礼」
「…ありがとう」
「またな」
ひらひらと手を振る、人懐こい仕草。
なにを考えているのかわからない男。
『謝らせたいの?』なんて台詞が出てくるからには、悪いことをした、もしくは私を怒らせた自覚はあるんだろう。
ため息が出た。
これだけで一歩前進した気になるなんて、レベルが低いにもほどがある。
じき一日のショーが終わる。
人が少なくなってくると、暑いくらいだった館内にすっと空気が通る感覚があり、時計を見なくても閉場が近いとわかる。
今日もブースは人気だった。
東京オートショーでは、来場者アンケートで毎年、人気のブースがランク付けされる。あれこれ出し物の多い国産勢が上位を占めるのが定番だけれど、今年はもしかしたら、伊吹さんたちのブースが食い込むかもしれない。
終礼も終わり、スタッフも三々五々ブースを後にする中で、わたしは遥香を探していた。
「すみません、森遥香って、まだいましたよね?」
ちょうどすれ違った中山さんに聞いてみた。ブース内の要補修ポイントをチェックしていた中山さんは、首をひねる。
「さっき伊吹さんといるの見たけど」
「あっ…そうですか」
「足痛めたって聞いたけど、大丈夫そう?」
「ええ、明日時間を作って、病院に行かせようかと思っていて。その話をしようと…」
「たぶん外じゃないかな。伊吹さん、終わるとよく一服してるから」
お礼を言ってブースを出た。
首に巻いていたストールで肩を包み、一定間隔で搬入口が口を開けている通路を、暗くなった屋外を確かめながら歩いた。
すぐに見つかった。
ふたつ目の搬入口の横につける形で、伊吹さんの会社の車が置いてある。鼻を建屋に向けて停められた車の、つややかな銀色のボンネットにふたりは座っていた。
「…ありがとう」
「またな」
ひらひらと手を振る、人懐こい仕草。
なにを考えているのかわからない男。
『謝らせたいの?』なんて台詞が出てくるからには、悪いことをした、もしくは私を怒らせた自覚はあるんだろう。
ため息が出た。
これだけで一歩前進した気になるなんて、レベルが低いにもほどがある。
じき一日のショーが終わる。
人が少なくなってくると、暑いくらいだった館内にすっと空気が通る感覚があり、時計を見なくても閉場が近いとわかる。
今日もブースは人気だった。
東京オートショーでは、来場者アンケートで毎年、人気のブースがランク付けされる。あれこれ出し物の多い国産勢が上位を占めるのが定番だけれど、今年はもしかしたら、伊吹さんたちのブースが食い込むかもしれない。
終礼も終わり、スタッフも三々五々ブースを後にする中で、わたしは遥香を探していた。
「すみません、森遥香って、まだいましたよね?」
ちょうどすれ違った中山さんに聞いてみた。ブース内の要補修ポイントをチェックしていた中山さんは、首をひねる。
「さっき伊吹さんといるの見たけど」
「あっ…そうですか」
「足痛めたって聞いたけど、大丈夫そう?」
「ええ、明日時間を作って、病院に行かせようかと思っていて。その話をしようと…」
「たぶん外じゃないかな。伊吹さん、終わるとよく一服してるから」
お礼を言ってブースを出た。
首に巻いていたストールで肩を包み、一定間隔で搬入口が口を開けている通路を、暗くなった屋外を確かめながら歩いた。
すぐに見つかった。
ふたつ目の搬入口の横につける形で、伊吹さんの会社の車が置いてある。鼻を建屋に向けて停められた車の、つややかな銀色のボンネットにふたりは座っていた。