極上な彼の一途な独占欲
涙で膨張したようになっている耳の奥に、そんな言葉が響いてきた。

諦めるもののことばかり考えていた私は、よく意味がわからず、「えっ?」と正直に聞き返してしまった。

伊吹さんが笑う。


「お前が、のめり込みすぎてたり、上の空で仕事したりするようなことがあったら、俺が必ず気づいてやる。で、叱ってやる。間違ってるぞと教えてやる。そういうやり方じゃダメか」


ぽかんと彼を見上げて、それに聞き入った。

そういうやり方、って。

視線を受け止めかねたみたいに、彼が気まずそうに目をそらし、早口になる。


「俺はわがままだから、欲しいものが手に入らないのは、嫌なんだ。天羽を解放してやりたいが、どうしたら俺のものになってくれるかしか考えられない」


なおもなにも言わない私に、いい加減焦れたように顔をしかめた。


「ふたりでも無理か? 俺がいると言っても、不安か?」


エルケーニヒ。

あなたはまさに魔王です。

私の中の、好きという気持ちをここまでふくらませて、ついにほかのつまらないぐしゃぐしゃした後ろ向きな感情を、押しつぶしてしまった。

これがあなたの魔力なら、私は従うほかない。


「伊吹さん、好きです」

「うん…?」

「好きです」


突っ立ったまま繰り返す私に、彼が困った様子を見せた。

それはもう聞いた、と言いたいんだろう。

違うんです。

だけどこれ以外、どう言ったらいいのかわからなくて。
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