極上な彼の一途な独占欲
涙が一筋こぼれた。

悲しみの涙と喜びの涙は、成分が違うらしい。もしかしたら伊吹さんには、成分を見抜く力まであるのかもしれない。彼の目が、はっとなにかに気づいた。


「好きです」


ねえわかって。

"でも"も"だけど"も続かない、ただの"好き"を受け取って。

伊吹さんの、驚きに見開かれた目が、やがて優しく緩み、腕が私の身体をゆっくりと引き寄せた。

涙で濡れた頬を受け止めてくれる、温かいワイシャツの胸。

私を抱く腕の、力が強まる。


「うん」

「好きです」


髪に押しつけられていた唇が、ふっと吹き出したのを感じた。

ぎゅうっと抱きしめられる安心感に、息が漏れる。

優しい手が、頭をなでた。


「わかった」


笑いをこらえているようなその声を、大好きだと思った。


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